はやく元気になれますように (まえかわ)

いまから5,6年前、重篤な心臓の病気で何度も命を落としそうになった女の子の治療にあたりました。

 

手術を何度もして心肺補助装置を何日も作動させ、なんとか命を救うことができました。

心肺補助装置をつけますと、20kgの体が30kg位になるまで全身浮腫んでしまうわけです。

大量の強心剤が必要となり、輸血量もどんどんかさんでしまいます。

 

吉村医局長、当時下っ端の私と神部君、クロキチ君で何日も交代でICUに泊りこんで治療したのですが、治療の甲斐あって、車いすですが自宅退院することができました。

 

 

この女の子が退院前に折り紙を折って置いて行ってくれました。

 

私が長野修行中にICUが新設され移転したあとも、この折り紙を看護師さんたちが大切に取っておいてくれたようです。

 

一般病棟にも同様に、この子が書いてくれた色紙があるのですが、

 

『二外科の先生、かんごしさんありがとう

 

 はやく元気になれますように

 

 はやく元気に歩けますように』

 

と書いてあるのですね。

 

手術がうまくいったとか、論文が受理されたとかもそうですが、患者さんに感謝されることが医療従事者の心の拠り所なのですね。外科医やってて良かったと思うのは、こういうときくらいかも(?)

 

(脱線しますが、手術がうまくいっても感謝されないこともありますし、結果及ばずとも感謝されることもあります。)

 

 

 

 

さて、この女の子だけでなく、当然ですが老若男女問わず入院患者さんのすべての願いは、はやく元気になって家に帰ることです。

 

 

病棟医長の金先生が入院、手術予定を立てて、私が手術から退院までのマネージメントをするように分担しております。

 

手術が終わり、心臓の手術をされた患者さんのほとんどがICUやハイケアユニットを経由し、循環器病棟へ移り、退院されていきます。

  • 何日くらいICUにいるのか
  • ハイケアユニットで少し慎重に治療するべきか
  • 病棟で個室管理すべきか大部屋でよいかとか
  • 循環器内科の先生にお願いして、退院前の精密検査をするべきか

などなど・・・

 

術後のベッドコントロールも相当に頭を使います。

 

(もちろん、手術予定組んだり、手術枠をもぎ取ってきたりするネゴシエーターの金先生も、相当に頭を使っていることと思われます。)

 

 

院内他科の患者さんもICUやハイケアユニットを利用するわけですし、急性期病院である以上、救急部からもどんどん患者さんが搬送されてきます。他の科の患者さんと自分の科の患者さんの重症度

(自分の科の医者の実力と他科の医者の実力も・・・)を鑑みて、重症ベッドを融通したりしなくてはなりません。

 

 

 

最近、心臓の手術はうまくいってもほかのことでなかなか自宅退院がかなわない患者さんが増えている気がして、気になっておりました。

 

これは社会的背景も含めてなのですが、たとえば…

 

 ①心臓は良くなったが、筋肉が衰え足腰がただず身の回りのことが一人でできない。

 ②家族と疎遠、独居。こども夫婦が首都圏にいる。

 ③家族はいるが、年老いた配偶者しかいない。

 ④生活保護を受けているため、役所の手続きに時間がかかる。

(⑤雪深い家に帰られない、帰りたくない。)

 

 

ということでやむなくリハビリ病院、療養型病床に転院することが増えてきました。

 

 

研修医の先生、学生さんには常々言うのですが、私が働き始めたころは、心臓手術の後の患者さんは動かしてはいけない、食べさせてはいけない、という考え方が主流だったように思います。

 

(研修医のころ、弁置換したのだから心不全になるから3日間食事させるな、と教育された記憶があります)

 

しかしながら、ここ数年は状態が許す限りどんどんリハビリを進めようということで、手術して24時間以内に歩行したり、食事したりは当たり前になってきています。

最近は理学療法士さんたちも顔なじみになっていろいろ無理を聞いてくれるようになってきましたし、一方で、理学療法士さんたちもどこまでリハビリを進めていいか、病状はどうなのかと積極的に尋ねてきてくれるようになりました。

 

最近はせめてリハビリを早期に導入し、上の①のような人をできるだけ減らしたいと考えているのですがいい方法はコメディカルの皆さんも包括したチーム全体で模索していくほかないようです。