マンガ書評その3(まえかわ)

散髪へ。

今の時期ですと、どこの床屋さんも冷やしシャンプーの看板を出しております。

 

『まえかわさーーん、冷たいですよーー』

 

と床屋さんに言われ、ひんやりする成分で頭を洗っていただきました。

 

 

昨日夕方まで、閑静な温泉街にある病院で当直業務にあたっていたのですが、途中から持参した論文も読みつくし、手持無沙汰でその辺にあるマンガを読み始めたのです。

 

 

『ゴッドハンド輝(テル)』(週刊少年マガジン、講談社刊)

 

 

主人公は私たちと同じ外科医なのですが、この方が天才だからなのか、マンガの端書に

 

『人の死に目に会わない絶対的天運を持つ』

 

と書いてあります。どんな人でも助けられるという設定なんでしょうか。

 

 

そんな無茶な。(ケチつけて申し訳ありません)

 

 

この週刊少年マガジンを読まれる少年諸君には非常に申し訳ないのですが、そういう設定ですと、やはり話に深みがなくなる気がいたします。

 

手塚治虫先生の『ブラックジャック』では、ブラックジャックが幼少時自分を執刀された本間先生の執刀をして助けられなかったという回があった方と思います。(記憶があいまいなのですが)

で、結局助けられなかったのですが、そこに本間先生の亡霊が現れて

 

『人の生き死にをどうこうするなんておこがましいと思わんかね』

 

と言い残すんですね。

 

他にも、ブラックジャックがせっかく助けた患者さんが交通事故で即死してしまって、安楽死専門医(?)のドクターキリコに嘲笑されたりする。

 

 

こういう時のブラックジャックの苦悩というのが非常に深みがあるんですね。

 

このブラックジャックを描いているときの手塚先生も、プロダクションが倒産したりして相当苦労したそうですが、その心象が作品に現れているとNHKスペシャルだかで放送してたような記憶があります。 

 

『ゴッドハンド輝』と『ブラックジャック』を単純に比べるのは、対象にしている方の年齢が違うので一概にどうこう言えませんが、やはり治療及ばず患者さんが亡くなってしまうということを『外科医モノ』では描写してほしいなあというのが、私の感想です。

なぜなら、患者さんが亡くなることからも医者は学ぶことがあるのです。

 

 

で、ゴッドハンド輝の最終回付近で『心臓腫瘍摘出術』をするわけです。

 

心臓というのは基本的に腫瘍がほとんどない臓器なのですが、100万分のいくつかの頻度で発症します。

山形の人口が120万としますと、年間数例の方が心臓腫瘍を発症していることになるのですが、大学にいる限り確かにこのくらいの頻度になる印象がありますし、私自身も何例か執刀経験はあります。

 

なんと、この主人公の輝君、心臓を丸ごと取り外し、心筋を保護するため氷水に心臓をちゃぷんとつけて残らず腫瘍を切除して、腫瘍切除で欠損した心臓の壁をパッチ修復してまた心臓を戻します。

 

輝君は、腫瘍が巨大すぎるため、この方法を取らざるを得なかったようなのです。

 

①人工心肺を確立して全身の臓器に血液を環流させ、心臓が働かなくてもいい状態にする

②心臓移植の要領で、上大静脈、下大静脈、大動脈、左右の肺動脈、4本の肺静脈すべて切断

③心臓を完全に取り出して、氷水につけながら腫瘍を切除

④心臓をもう一回戻して全部の血管を縫うことになります。

 

 

『自己心臓移植』であります。

 

 

ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!

 

めんどくせーーーーーーーーーーーーーーッ!!

 

侵襲大きいーーーーーーーーーーーーーーッ!! 

 

(※私のような中年のオッサンが少年の夢をぶちこわしてはいけません)

 

私は浅学なので、『心臓腫瘍をこうやって切除した』という報告を聞いたことはないのですが、おそらくこのマンガの医療監修の方がどこかから症例報告を聞いてきて、漫画家さんにアドバイスしたのでしょうか。

 

 

ちなみに・・・

 

金先生  『ゴッドハンドなんておらん』

 

内田先生 『手術は職人芸ではなくて、トレーニング次第で誰でも身に着けられるものでなくてはならない』

とのことです。

 

マンガだとゴッドハンドが書きやすいし、ヒロイックですから読んでて面白いのですが。

 

 

で、お決まりの彼女と思われるカワイイ看護師さんがおにぎりを作ってくれるわけです。

(私はそろそろ医者10年目が近づいてきましたが、看護師さんにおにぎりを作ってもらったことなどありません)

 

でもいいのです。

医局には日本一おにぎりを作るのが上手な秘書未来氏がいますので、これについてはノーコメントであります。

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コメント: 3
  • #1

    みく (月曜日, 30 7月 2012 18:06)

    一昨日見たテレビで
    「おにぎりは冷めて固くなることを考えて、ふわっと握るのがよい。あとは気持ちが大事。」
    と言っていました。
    なるほどなるほど、『気持ち』には自信がありましたが、次回からはふわっとを心がけて、さらに上達を目指します!!

  • #2

    キイロイトリ (金曜日, 03 8月 2012 15:29)

    夏休みにブラックジャックを読み返してみようと思いました。それとタッチ。夏ですからね。
    ただマンガはまとまった時間がある時よりも、ふとした時に無償に読みたくなるものだから不思議です(^^)

  • #3

    まえかわ (土曜日, 04 8月 2012 15:45)

    みく様
    なるほど。私は一時期おにぎりを粗製濫造したことがありまして、家内を辟易させたことがあります・・・。

    キイロイトリ様
    私も社会人になってからはまとまった時間がとりにくいため、マンガですらたまに『積ん読』になってしまいますが、置いてあるだけで疲労回復のインテリアに思えてくるものでございます。