カキポンと標準偏差(まえかわ)

イメージは、『カキポン』氏です。

ある篤実な患者さんが、大学病院の集中治療室に10台も寄付してくださいました。

 

その患者さんは、退院された後私の外来にいらっしゃった際、

 

『提案したいことがあります。

 

 集中治療室で、人工呼吸管理中話できないことが辛かった。

 

 もしこういうものがあったら便利かな、と思ったのですが、寄付させていただけませんか』

 

 とお話を下さいまして、このたび寄付して頂きました。

 

 

手術のあと、循環状態や呼吸状態が安定せず、なかなか人工呼吸管理を終えることができない方がそれなりにいらっしゃいます。こういう方たちは、声を出すことができませんので、コミュニケーションが取れず非常につらい思いをされることと思います。

 

このカキポン氏はさっそく集中治療室とハイケアユニットで活躍しております。

おそらく砂鉄に磁力のペンでなぞり描出するという仕組みなのでしょうが、右端のボタンで一瞬で文字を消すことができ、何度でも書き直しができ非常に便利です。筆圧もいりません。

今まで同じような患者さんは50音の表から文字を指で選んでもらったり、油性マジックで書いてもらったりしていたのですが、これだとかなり理解するのに時間がかかりますし、油性ペンだと筋力が衰えている患者さんの筆圧ではうまく文字をかけない可能性が高いのです。

 

本当にありがとうございました。

 

 

 

さて、統計の話 with カキポン氏。

 

基本的な統計学を学んだ方には当たり前のことで恐縮です。

 

先日テレビを見ていますと、網戸とカの話をしておりました。

 

『網戸しているのになぜかカが入ってくる』

という話だったのですが、

 

『網戸の網の目は1.0mm、一方でカの体長は1.5mmなので、網戸が破れていなければ原則的にカは入ってこない』

というものでした。

実際、網戸の開け閉めや、破れ、損傷でカが侵入するということのようです。

 

ここで、私はこの大学院卒業間際に苦しめられた統計の話を思い出したわけです。

 

理系の高等教育を受けられた方は、講義や研究などで『平均±標準偏差(SD)』という数字の表記を目にされているかと思います。

たとえば、対象となった患者群100人の年齢は『60.0±12.5才』であった。という感じです。

100人分の100個の年齢データを、平均『60.0』と標準偏差『12.5』という二つの数字で表すことができるので、非常に便利な概念です。

 

これは、図のように正規分布する群に対して有効な表記法なのです。

図で言いますと、±1SDの範囲内には68%の個体が、±2SDの範囲内には95%の個体が含まれるということになります。

この年齢データでいうなら・・・

±1SD内(年齢47.5~72.5)に入るのは、100人中68人。

±2SD内(年齢35.0~85.0)に入るのは、100人中95人。

 

ということです。

 

ということはですよ。このテレビ番組のいうところのカの体長の平均が1.5mmであったとしても・・・。

カの体長が正規分布して、仮に標準偏差が0.25mmとしますと・・・

±1SD内(体長 1.25~1.75mm)に入るのは、カ100匹中68匹。

±2SD内(体長 1.00~2.00mm)に入るのは、カ100匹中95匹。

 

この2SDの範疇外、むちゃくちゃでかい2.00mm以上のカが 残り5匹中半分の 2.5匹、

1.00以下のむちゃくちゃ小さいカが残り2.5匹。

100匹いるカのうち2.5匹くらいは網戸を余裕でスルーできる小さめの個体ということになります。

 

といいましても私は昆虫学者ではありませんので、カの体長の標準偏差がもう少し小さく、網戸はもっとスルーされにくいと信じていたいのですが。

 

で、基本なのですが『平均±標準偏差』で表記できるのは、正規分布する変数ということになります。

正規分布しない変数をむりやりエクセルなどで標準偏差で計算しますと(この式は私はマッタクわかりません)、たとえば

 

入院日数は『5.0±6.5日』でした、という変な話になってしまいます。

マイナス1SDが、5.0-6.5=-1.5日になってしまい、入院日数がマイナスってどういうこと?という感じになってしまいます。

私は、『いやな奴だなー』と思われるかもしれませんが、製薬会社のMRさんがクスリの説明に来られてこういう表現をされますと、『統計学的に間違っているので、本社の学術の方に相談してください』と指摘してしまいます。

 

小難しい話で恐縮でした。

数学の話ですと、数学の教員免許を持っている秘書未来氏のほうが詳しいかもしれません・・・。

 

カキポンさん、これからもICUに入室される患者さんをよろしくお願いします。