メタリック (まえかわ)

医局での私の机は、内田先生と背中合わせになっています。

 

間に内田先生の膨大な数の文献を収めた本棚があり、その本棚の上にこのメタリックな『ヅラ』があります。

宴会の景品だったようです。

 

 

『ヅラ』のはなし。

私が研修医になったばかりのときに(確か大泉先生に)聞いた話です。

(大泉先生はこのテの話題を、さも嬉しそうにウヒャヒャ、と話して下さいます)

 

 

『電気メス』は、ほとんどすべての手術で用いられるもっともポピュラーな手術器械です。

wikipedia先生を参考に補足しますと『ペンシル状の先端より高周波電流を流して、このときの抵抗でジュール熱を発生させ、この熱で細胞を蒸散することによって切開したり、細胞の水分を蒸散させることによって凝固したりする』手術器具です。

 

このとき、高周波電流の逃げ道が作られるように、背中などに『対極板』と呼ばれるパッドをはります。(アースみたいなものとご想像ください)

 

しかしながら、ピアス、指輪など金属を身に着けていますと、こちらにむかって通電してしまい、この金属表面で熱を発するためやけどをしてしまうことがあるんですね。

したがって、手術室に入室する前に担当の看護師さんは体に金属がないかどうか、身につけているものすべてを厳重にチェックすることになります。

 

 

ある病棟の新人看護師さんが、この手術室入室の前に患者さんと最終チェックをしていたそうなんですね。

 

ある患者さん『・・・実は・・・・』

 

 

 

      『俺、ヅラなんだ・・・・』

 

 

 

      『誰にも言わないでくれ・・・・』

 

 

 

新人看護師さん『・・・』

 

 

 

新人看護師さんは、このことを(『王様の耳はロバの耳』的に)誰にも打ち明けられずに、この患者さんはヅラをつけたまま手術を受けられたそうなんですね。(私はヅラの構成要素はよくわかりませんが、金属で止めるタイプのものだったようです。)

 

 

この看護師さんの苦悩たるや・・・

 

心中お察しします。

 

チーーーーーン  (←仏具の鈴の音)

 

 

 

結果、手術が終わってみますとやっぱり頭皮をやけどしてしまい、この新人看護師さんは病棟師長さんに大目玉をくらってしまったそうな・・・ (←カワイソー・・・)

こうなってしまえば、当然ヅラのことは病棟中、いや、病院中に広まってしまうことになります。インシデントレポートというかたちで、医療安全委員会に報告されてしまいますので。

 

あぁ,無情.

 

私が研修医としてこの病院に採用された時も、新人看護師さん、研修医、コメディカルの方たちと医療安全講習をみっちり2週間受けました。この時『電気メスの原理』を臨床工学部の方が教えてくれるのですが、この新人看護師さんは電気メスでこういう事故を起きることを知らなかったのか、ヅラに金属が含まれていたことを知らなかったのか、かわいそうな目に合ってしまいました。

 

 

でもですよ、自分がこういうことを打ち明けられたらどうします?

 

言うべきか言わざるべきか。

 

シェークスピア(?)ですよ。