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ノロウイルス,インフルエンザウイルスなどの冬に流行するウイルス性疾患がちらほら目立ってきました.
非医療従事者のみなさまのために説明しますと,病気を起こす微生物は大きく分けて4種類あります.
1.細菌
2.ウイルス
3.真菌
4.寄生虫
1.細菌は大体大きさ数ミクロン(ヒトの赤血球と同じくらいです).私の生涯の仇敵である黄色ブドウ球菌(MRSAも含む)も細菌です.彼らとの主戦場は私の場合,手術室,集中治療室,循環器病棟になります.
現在,ここ5年くらい当科で心臓血管手術を受けた600人の患者さんの臨床分離菌のデータを収集していますが,ブドウ球菌のほかにも,腸球菌,肺炎球菌,肺炎桿菌,大腸菌などが多く検出されます.
2.ウイルスは細菌のさらに1000分の1位の大きさしかありません(数ナノ).今日お話しするノロウイルスもカキからヒト,ヒトからヒトに感染します.
私たちがウイルスに苦しめられることはほとんどないのですが,心臓手術を予定されていたこどもさんがウイルス性の風邪になり手術を延期せざるを得なくなることがよくあります.
病院内で他にもアウトブレイク(異常発生)を起こす困ったヤツは,流行性角結膜炎をおこすアデノウイルスや,風疹,麻疹ウイルスなどでしょうか.
このアデノウイルスで病棟閉鎖に追い込まれることがときにあります.
3.真菌は言ってみればカビの仲間ですが,これも私たちが苦しめられることはあまりありません.いわゆる免疫不全の方に,カンジダ,アスペルギルス,ムコールといったカビが感染巣を作ることはあります.
4.寄生虫ですが,熱帯地方では重要です.温暖化が進むと,いずれ日本本土でもマラリアが出るんじゃないかとの予測はありますが,現在のところ私たちが大きく被害をこうむることはありません.
ウイルスというのは諸説ありますが,『生物』ではなく『無生物』に近いという言い方をされる先生がいます.
生物の定義として『自己複製能』があるという条件があるのです。
ウイルスは、増殖装置は感染する宿主の細胞のものを借りなくては増殖できないので,生物の条件を満たしていないのです.言ってみれば,DNA, RNAと、たんぱく質のカラ(たまにその外に脂質の膜を持つものもいる)だけの『機械』みたいなものです.
ノロウイルスのはなし.
私は海のそばで育ったので『カキ』が好きなのです.
長野時代,感染担当の先生と広島に学会に行った際,冬のカキに手を出してしまったんですね.
パーティー全滅でした.
性懲りもなく,それ以来冬にカキを食べてしまうのですが,医者になって以来全敗です.ノロウイルスにおめおめと(私の消化管粘膜の細胞という)増殖する場を提供しているのです.
やつらの引き起こす腸炎は特徴的で、胃袋に鉛を突っ込まれたような特有の症状がでます。
私が学部の5年生のとき,上の学年の先輩たちの『追いコン』をしたんですね.病院近くの居酒屋で.
でました,『カキ』.
実にサークルの3分の2が下痢・嘔吐を伴う腸炎に侵されるという事態になってしまいました.
医師国家試験を3週間後に控えた先輩も入院することに. 幸いこの先輩は合格しましたが。
ノロウイルスにはアルコール消毒は効かないというのが定説です.
ウイルスには,最外層に脂質の膜(エンベロープ)をもつものともたないものがあります.アルコールは界面活性作用でこのエンベロープを破壊することにより消毒作用を発揮するのです。したがって、ノロなどのエンベロープのないウイルスには効きません。
(ですが、環境感染学会の抄録集を読みますと、最近ノロウイルスにも多少はアルコールは効くらしいという報告があるようです。)
ノロウイルスには、現在のところアルコール消毒ではなく、流水手洗いがスタンダードのようです。
iPhoneアプリで海外の感染ニュースを読んでいるのですが、アメリカの病棟閉鎖の原因の約65%がこのノロウイルスによるそうです。
感染力が強力で、ウイルス粒子(専門用語でビリオンといいます)10コだけで感染が成立するのです。なのに、感染者の便1gにおよそ1億のウイルスがいるというんですから、もう桁が違います。
手洗いうがい。繰り返しますが、大事なことです。
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