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イメージは手術用の手袋です。
滅菌処理をされているもので、患者さんに対して医師が手に常在させている菌を感染させないため、患者さんが持っているかもしれない肝炎ウイルス、エイズウイルスなどに医療従事者が感染しないためにつけるものです。
事の発端は、1年ほど前の出来事でした。
医療現場で、様々な用途で使用されているラテックス(天然ゴムの1種)で、アレルギーを起こして死亡する患者さんがいるらしいと最近分かってきたそうなのです。
また、ラテックスをたくさん使用する医療従事者も、これに曝されることからアレルギー性ショック(『アナフィラキシー』といいます)を起こして死亡する方もいるそうなのです。
(卑近な例ですが、家内もラテックスで相当肌荒れするようで、よくわかりませんが、ラテックスは体に合わない人には相当悪さするヤツなんだなあという認識は持っていました。)
で、当院の手術部でも、とりあえず小さなこどもさんにラテックスを暴露させるのはやめようということで、こどもの手術でラテックスの無い手術にしようという機運が高まったようです。
手術の手袋もラテックスがついているものは悪者ということで、いろいろ選定されたようです。
で、出てきた手袋に驚きました。
食器洗いのゴム手袋みたいな分厚さで、心臓を縫うような繊細な糸を持っている感覚が全く分からないのです。
手術室の看護師さんも、心臓外科みたいな繊細な手術では、このラテックスが含まれていないけれども、バカみたいに分厚い手袋では手術できない、ということは十分理解して下さって、四方手を尽くして業者さんと一緒にラテックスの含まれていなくて、かつ触覚が鈍らない手袋を探してくださいました。
探し求めた1品があったのです。
しかしながら、1双あたり70円位の割高になるようで、これを1年間使い続けると、大学病院全体で15万円程度の支出増になるようです。
私はこの手袋が採用されないと手術に支障がでますので、採用してくれるように申請を出したんですね。
で、今日材料部審査会という会議に出向きました。大学病院に新しい材料を採用するための会議ですが、病院に数千もあるという医療器材を無限に増やすわけにはいきませんので厳しい審査がされます。
この15万円/年という額で難色を示されたのですが、『外科医の手術のしにくさ』というのはお金に換算できません。
何やら『屁理屈』をこねなくてはならない会議のようですが、他の科のご支持を頂き何とかこの探し求めた『高い手袋』は病院に採用されました。
家に帰ってから、屁理屈をこねるとしたらどうしたらいいかと無い知恵を絞って考えました。
医局長と私で、悪い手袋を使って小児心臓手術をした場合、心臓を縫っている糸の感触がわからずに手術が失敗する確率が何%であり、これで失われるこどもの命の額がいくらとすると、やはりいい手袋を導入したほうがいい、という議論になるんでしょうか。 極論ですけど。
もちろん、人の命をお金に換算するのは倫理的にしてはならないことです。
あるいは、そこまでいかなくても、悪い手袋をつけると〇時間手術時間が延長し、これによる人件費、麻酔薬などの薬剤費、人工心肺維持費、電気代、光熱費は〇〇円だから、損得を勘定するとやっぱり外科医にはいい手袋をつけさせていい手術をさせよう、という議論になるんでしょうか。
病院の経営上、医療経済学的なことは考えなくてはならないでしょうけど、医療ですから当然お金に換算できないこともあるでしょう。(外科医の手術のしやすさもしかり。)
『お金』と『命』
アメリカの有名なたばこ会社は、ある国に
『このたばこをこれだけ消費すると、国民の寿命が短くなって医療費が安くなる』といって輸出を試み、社会的に大きな非難を浴びたそうです。
どう考えても倫理的に間違っているでしょう。
人の命を短くするものを『わかっていて』売り込むんですから。
まあ,どこかの国のたばこ会社も,たばこを作りながらもう一方の手で『抗がん剤』作ったりしていますけど.
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