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まずはじめにお礼から。
昨日は元旦とお忙しい中、訪室者の方が50人もいらっしゃいました。この場を借りて厚く御礼申し上げます!!
いつもありがとうございます!!
家内が当直で不在なので、暇を持て余してマニア本2で再び黄色ブドウ球菌の研究を再開しました。
この本はスゴイ!!! 『Staphylococci in Human Disease 2nd ed』という新兵器です。
私が日常臨床で知りたかったことが的確に描写されています。
神仏がもしいるなら、黄色ブドウ球菌との戦いに打ち勝てるようにこの書物と私と引き合わせてくれたのでしょう(かなり大げさです)。
『敵を知り己を知れば百戦危うからず』ということですよ、ゲヘヘ(ハヤシ笑い)。
この書物の12章では、『黄色ブドウ球菌がいかに人間の鼻腔に常在して、常在しているものがいかに病気を引き起こすか』ということに主眼が置かれています。
一般人口の20-30%が鼻腔に黄色ブドウ球菌を常在させているようですが、この数字は、どちらかというと減少傾向にあるようです。著者は衛生環境の改善がこれに関係しているのではないかと述べています。
一般人口の20%の人が一生ずっと黄色ブドウ球菌を保菌する『永久保菌者』
60%が人生の一時期にのみ黄色ブドウ球菌を保菌する『一時的保菌者』
20%が一生黄色ブドウ球菌を保菌しない『非保菌者』
のようです。
この永久保菌者が、一定のコミュニティにおいて黄色ブドウ球菌のリザーバー(貯蔵庫)として働いているようです。どのような人が永久保菌者になるのかは、遺伝的素因が関係あるのではと書かれていますが、『黄色ブドウ球菌が増えやすいハナクソ』を分泌する人が永久保菌者になるのでは、と私は推察しています。
さて、私が修行に出ていた長野県立こども病院でも、新生児ICUでたまにMRSAのアウトブレイク(群発)が起こり、頭を抱えていました。
新生児は一般成人の20-30%よりはるかに黄色ブドウ球菌の保菌率が高く、50-60%くらいが保菌しているようです。これは、免疫が不十分であることや、へその緒の断端を好んで黄色ブドウ球菌が定着することがあるのではないかと書かれています。
この黄色ブドウ球菌は仲が悪い菌がいるようです。
①肺炎球菌 Streptococcus pneumoniae
②コリネバクテリウム
これらが鼻腔に先に常在すると、黄色ブドウ球菌は定着できないようです。この現象を『菌種間干渉 bacterial interference』と表現されています。要するに、『縄張り争い』的なものです。
確かに、私たちの科で行っている手術前の鼻腔培養検査でも、コリネバクテリウムが検出されると、黄色ブドウ球菌は検出されません。その逆もしかり。
ウソかホントかまだ分かりませんが、最近高齢者に接種され始めた肺炎球菌ワクチンをうつと、肺炎球菌による感染は減るのですが、黄色ブドウ球菌の保菌率が上がるというデータがあるようです。
よく、医療従事者はMRSAをたくさん持っているといわれ、私たちもたまに魔女狩りのように鼻腔検査されますが、決して一般人口と比べて黄色ブドウ球菌の保菌率が高いというわけではないようです。
黄色ブドウ球菌がどんな生物学的地位(niche)を狙ってコロニーを作ろうとするか、この性質を見定めて感染対策するのが大事かなーと、『半分心臓外科医、半分微生物学者気分』の私は結論付けました。
バイキンについて熱く語る私に
内田先生『前川は細菌学の教授になったほうがいいんじゃねーか』と。
バイキン研究は性にあってて楽しいのです。
私くらいの学年になると、大学院で研究されている方も結構いらっしゃいます。
私と同じくらいの世代の、内科系のある大人しい女医さんと大学院の研究の話をすることがありました。その方は、ネズミの肺を水浸しにして、肺にサイトカイン(簡単にいうなら炎症物質)がどれだけ出るかを研究しているんだそうです。いわゆる、『急性呼吸不全モデル』のネズミということなんでしょうか。
ヒーーーーーーーッ!!! コワイッ!!
昨日の話の続きみたいですが、私は倫理委員会を通ろうが通るまいが、『食べる』以外の行為でほかの生き物を殺生したくないので、こういう研究を命ぜられなくてよかったです。
バイキンを殺滅するのに罪悪感はありませんから。
(実際、私は後輩が術野の消毒をするとき、『ちゃんとグラム陽性球菌、皆殺しにしとけよ!!!』といいます。)
このことを中村君に言いますと、
『ゲヘヘ、やつら(黄色ブドウ球菌)は殺されるために存在してますからね、ゲヘヘ(ハヤシ笑い)』なそうです。
今回は小難しい(マニアックな)話で恐縮ですが、書かずにはおれなかったのです。
非医療従事者のみなさん、ごめんなさい。
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雪やこんこん (月曜日, 02 1月 2012 20:36)
こんばんは。
まえかわ先生の熾烈な黄色ブドウ球菌との闘いの様子がちょっと垣間見れました。にしても、医学書って、ちょー高いんですね。きゃー!
まえかわ (月曜日, 02 1月 2012 22:22)
雪やこんこんさん、いつも訪室ありがとうございます。
医学書は、たとえばワ〇ピースみたいな何千万部も売れるものと違って、需要が少ないので高いのです。たとえば、この本はおそらく日本で100冊は売れてないでしょうし、山形県で持っているのはたぶん私くらいだと思います。
でも、いいのです。
家内が言うように、本とお酒しかお金を使うことがない朴念仁なので・・・。
おもち (火曜日, 05 7月 2016 19:07)
まえかわ先生はじめまして。
黄色ブドウ球菌で2度痛い目に合っており、非医療従事者ですが大変興味深く読ませて頂きました。