直感の力(まえかわ)

今日も当直ですので,ICUからお送りします.

昨日は循環器センターの忘年会だったのですが,不義理なことに欠席させて頂きました.

ごめんなさい.

難度・複雑性の高い手術で,どうしても予習が欠かせなかったのです.

帰ってからも,ご飯作ったり皿洗ったりは家内にお願いし,和書,洋書,DVDとひたすら勉強してました.

 

 

直感の話.

 

写真は『天才!(原題 outliers)』という本.

このマルコム・グラッドウェルという学者の本を読んだのですが,どの職業でも成功するには『一万時間におよぶトレーニング』が必要,ということです.

何か一つのことにそれだけの時間『脳』が暴露され続けなくては,周囲から逸脱した存在(これを『outliers』というのでしょうか)になれないということなのかな,と私は解釈しました.

 

この本の原題 『outliers』というのは『外れ値,異常値』という意味があるようです,

ただのビジネス本というより,心理学書・教養書という側面が強いと感じました.

 

この本では人間の『直感』の持つスゴイ力,反面,陥ってしまうワナについて述べられていました.私には,ビジネスに成功する,しないの『一万時間の法則』よりこちらの方が興味深かったのです.

 

 

最近,直感が働いたこと.

私は本業はこどもの心臓外科なのです(決してバイキンのみではない).

ある日,比較的頻度の多いこどもの心臓の手術を終えて,ICUに帰ってきたのですね.

 

で,モニター見ても,術後の心エコー見ても比較的よくあるパターンの経過で,医局長も帰宅し,23時も回ってそろそろ休憩しようかなーと思ってたんです.

 

でも,なーんか胸騒ぎがして,普段はそんなこと絶対しないのに

『この患者の体重は何kgだから,急変したら,ボスミン(アドレナリン:蘇生薬)この濃度で希釈してすぐ呼んでね』

 と看護婦さんに言ってたんですね.

急変してパニックになると薬剤の希釈とかで事故を起こすかもしれないので,なぜかそのときだけは紙に書いて点滴台に貼っておいたのです, こどもは体重で薬剤の量が全然違うので.

 

やっぱりでした.

急変して,心停止.

心肺蘇生,ボスミンを使う羽目に.

以後修羅場・・・.

 

蘇生が早く,チームが集まってくれたので,この方は事なきを得ました.

 

この日,私の『脳』はどんなデータをどう解釈して,ボスミンを準備しようとしたのか論理的には説明できません.

でも,8年目くらいのぺーぺーの私でもこういう経験をするので,もっとキャリアを積まれた先生はこういう『第6感』的なものが磨かれているんじゃないでしょうか.

実際の患者さんを見る場で,数値化できないものを人間の(臨床医の)脳は解釈・分析しているんじゃないかなーと思うのです.

 

朝夕の回診でも,具合悪いかそうでないかって,たぶん『顔見て0.5秒』くらいで判別している気がします.それ以後,もちろんお年寄りとかはあーだこーだ話しますけど,大事なことはこの,『顔見て0.5秒』でわかるような,そんな気がします.

おそらく私の『脳』は,患者さんがむくんでいるとか,血色がどうとか,声色はどうか,姿勢はどうか,ご飯残してないか,そういう情報を意識下で処理しているんでしょうけど,これも理屈で説明できません.

でも,病状が快方に向かっている患者さんは会って0.5秒で,何も言わなくともなんだかこちらも『ホッとする』.何が悪いか説明できないけど,なんかこの患者さんヘンだなー,と思ってると急変する,そんなことは日常よくあります.

 

私は,この『直感』というのを結構信じていて,しかもこの直感を鈍らせる最大の敵が『なまけ心』だと,普段から固く信じています.

(次回へ続く)