晩酌(前川)

時間があるときは読書していることもあります。

今日は家内が当直明けでぐったりしているので、読書してたんですけど。

 

渡辺昇一『知的余生の方法』

 

鶴岡出身の方みたいですね。この方の以前書かれた『知的生活の方法』というのはベストセラーだったみたいで、おそらく学生のとき読んだと思うのですが、覚えていません。学生の時分にはキャパシティがなかったのか、自分の実になっていないのでしょう。

『晩酌の習慣のあるもので、本を仕上げられるものはいない』というのが学者の世界の定説、と著者が述べているのですね。この言葉は、かなりグサッときました。そういえば、病理の本山教授も酒を飲むのは23時以後、と若い時から決めていた、という言葉を思い出しました。

自分はあまり立身出世を考えたり、いわゆる肉食系ではないと思ってます。ただ、何らかの知的所産を世の中に残したいと思っているので(でも、私の書く論文なんて血なまぐさくて泥臭い、内科の先生方が書かれるような高尚なものではないですよ)、いま22時ですでに一杯やっている自分にこの言葉は衝撃でした。

 

辻邦夫の『背教者ユリアヌス』もこの間読みました。このユリアヌスは西暦300年代のローマ皇帝で、キリスト教を国教にした叔父のコンスタンティヌス大帝没後、キリスト教優遇策に反して古代ギリシア・ローマの伝統的多神教を擁護した人です。最後の異教徒(非キリスト教徒)皇帝として、『背教者』とキリスト教側から弾劾されているんですね。

このユリアヌスはもともとストア派の哲学者を志していたのですが、数奇な運命から皇帝になって、ペルシアとの戦争で肝臓に槍を受け命を落とすんですよ。このペルシアとの戦争中の彼の唯一の楽しみが、夜幕舎で哲学書を読んだり書いたりすることだったそうです。 高潔な人ですなー。ちなみに、エドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』には、『ユリアヌスは短い政略結婚の期間を除き、女性と床をともにすることすら無かった』と書かれています。

日中オリエントの砂塵にまみれ戦争して、夜灯りをともして哲学書書いて、ギャー、なんてストイックなんだ!!かっこよすぎる!!感動しました。

辻邦夫はこの哲学書を書く行為を『著述』って言ってるんですね。私も気取って、論文を書く行為を『著述』とひそかに呼んでいます。繰り返しますけど、決して高尚な文章ではありませんし、たいてい和文ですよ。

この時のユリアヌスの没年が31歳7か月なんですよ。最近32になったばかりの私は少々考えさせられました。