気になるあいつ(林)

ぼくらの医局の側に,ぼくらがよく利用するトイレがあります.そこのトイレは個室の便器がふたつあり,そのうち奥の個室は1m程度の高さに,小さく開く窓が付いています.

 

1週間ほど前からだったでしょうか,そこの窓辺に気になるものがあります.大きさは1センチほど,こげ茶色の球体です.最初は気にも留めていませんでした.窓枠が木製の枠に白のペイントが施されていますがやや古く,全体に薄汚れているのでそれほど目立たないからです.しかしある日,ふとその存在に気づいてしまいました.そのうち掃除のおばさんが片付けてくれるだろうくらいに思っていましたが,あくる日もあくる日も彼はいるのです.最初は形が球体なこともあり,その立ち姿に不安定な印象がありました.ころころしてしまわないかな.しかしこうも長きにわたって存在するところを見てしまうと安定感を認めざるを得ません.鎮座しています.

 

あれはなんだ?なんで1mの窓辺にのし上がれたんだ?いったい誰が・・・?最初はそんなことばかり考えていました.これをお読みの皆さんも,これが何なのか,そのことを一番お考えでしょうよ.

 

でも違うんです.僕が言いたいことはそんなちっぽけなことではないんです.

 

僕が最も驚いているのは,自分自身の彼に対する気持ちの変化なんです!

 

最初はイマイマしいと思っていました.なんだよこれ.誰だよこんなことしたの,だれか片付けないのかよ,と.しかし日が経つにつれ,あることに気がつきました.おれ,あいつ,気にしてない・・・?

 

2つある便器のうち,必ず彼のいる窓付き便器を選んでいる自分がいました.むしろトイレのメインエントランスをくぐる時から,今日,彼,いるかな.そんなことを知らず知らず考えてる自分がいました.彼がいると,小さく,小さく,誰にも気づかれないように,自分自身にも気づかれないくらいに,「よし」と思っています.

 

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今後,かれはどうなるのでしょうか.気になります.